時間… | ぼやきますか?

時間…

引出しの中の雑多に飲まれるようにして存在していた携帯電話。新しく移り行く携帯電話の中で抜け殻のようにポトッと落ちていたものだ。死んでいる画面、もちろん電源など入るわけも無い。そっと充電器に差込み電源を入れる、画面はそっと息を吹き返す。しかしその中にも使っていた形跡は残っていない。よく確認すると、その中に写真が残っている。おもちゃのようなカメラを使ってせっせと保存を繰り返した写真たち、それだけが何故か必死にしがみつくようにして存在していたのだ。
おれは一つ一つ見返してみた。その頃の思い出がふっと蘇える。タンポポの綿毛が舞い上がるようにごく自然に。日付を確認すると、その流れた時間に戸惑いを覚えた。あの記憶していた日々から今までどのように過したのだろうか、わからない。一つ一つ考えていけば、あれをしたこれをしたと思い出せるのだが、時間接合点が見定められない、頭の中がジグソーパズルのように継ぎ接ぎだらけとなっているような錯覚を覚える。いや錯覚なのだろうか、その中の何ピースかが失われてしまっているそう思えた。時間と言うものは人生の中で長大で緩慢としたものと多々感じる事があったが、実に時間とは限られた鬼気迫るスピードで容赦なく我々を追い立てるものかと恐ろしささえ感じてしまう。写真には当時のままの風景画、ごく自然に存在している。失われていく時間を繋ぎとめていくには、こうしてその風景を無理やり閉じ込めることでしか可能ではない。大切な時間、これからも写真に収めつぎつぎと時間を自分のものとしていこう。おれはほんのささいな抵抗をしていこうと心に決めた。