ジレンマ | ぼやきますか?

ジレンマ

「もう電話なんてしたくない」彼女は突然そんな事を言い出した。無理も無い
毎回電話すると言い合いになるのだから。結局のところ二人とも寂しかった、ただ寂しくて切なくて会いたくて、おれはせめて声だけでも聞きたいと願うし、彼女は上手く話せなくなる。この悪循環が原因だった。正確に言えば原因でありつづけている。

彼女はそんな時、電話をしても無視をする事が多々ある。おれはどんな時でも無視だけはしないでくれと約束をとりつけるが、それでもしばしば無視されることがあった。そんな時はいつも、一緒に乗り越えていこうよと説得する事となる。そして、いつもおれの方が妥協する事となる(尻に敷かれているのだろうか?うん、たぶん)正直に言って、もうダメかなと考えてしまった時もある。それでも、二人の想いは変わらずあり、おれも彼女もまたお互いを必要としているのは間違いない事実だったから、語り合い、抱きしめあって乗り越えてきた。

以前にも書いたが、喧嘩する事はお互いを理解しあう、ある意味チャンスなのだと、おれは考えている。それはおれ達二人にも例外なく当てはめる事が出来る。ただ問題なのが、気に入らない事や憎しみあって喧嘩しているのではないということだ。会えば傍から見れば目を背けたくなるほど(言い過ぎかも知れないが)仲が良い、後ろ髪が引かれて帰ることがなかなか出来ないほどだ。その分会えなくなると寂しさは恐ろしいほど激しい。普通の人は皆、我慢というものをしたり、他にやることがあって気を紛らわす事が出来るのだろう。無論おれ自身、そういった努力はしている。しかし彼女の方は寂しくなるとイライ
ラしたり上手く話せなくなる様なのだ、黙り込んでしまう。

そして、電話の話に戻ると、会えないからこそ、おれは声が聞きたくなる。少しでも長く声を聞いていたい。彼女はやはり沈み込んでしまう。お互いがイライラしてしまう状況へと加速していくのだ。逃れる手のない蟻地獄に二人は迷い込んでしまう事となる。

結局のところ電話しなければ良いのだろう。それでもやはり、こういった条件(借りにここでは「電話をすると」と設定する)は禁止であると、そこに封印をしてしまうのは、不安なのである。これは邪魔だから倉庫にでもしまっておこう、ふぅ、これで大丈夫、なんて言えたものではない。顔を背けていても、それは一つの弱点なのだ。これからもずっと一緒にいようなんて恥ずかしい事を言っている二人には弱点があってはならない、そう考えてしまう。

少しずつ少しずつ、二人の距離を縮めて歩んでいきたい。その時には、こんな悩みなくなっているのだろうと思う。